AmazonのKiindle unlimited(読み放題)で無料でレビューが高かったので読んでみました。『オプティミストはなぜ成功するか』。ざっくりまとめると「うつ病は楽観主義を習得することで治すことができ悲観主義は物事を現実的に捉えるのに役に立つ」という内容。また、この本の著者はうつ病と異常心理学に関する世界的権威であるマーティン・セリグマンさんです。日本語訳の初版は1991年8月。
なんとなく読み始めたのですがなかなか面白くて一気読みしてしまったので、内容を簡単の要約と感想なんかをシェアしたいと思います。
1.要約
分量が多かったので細かいところは拾い上げてませんが要約すると大体こんな感じだと思います。
1-1.オプティミストについて
この本では『オプティミスト』と『ペシミスト』という言葉がよく出ます。
オプティミストとは『楽観主義の人』を指し、ペシミストは『悲観主義』の人を指します。
不運に見舞われたとき、オプティミストは「不運は一時的なもので、その原因もこの場合だけだ」と考えるのに対し、ペシミストは「悪いことは長く続き、自分は何をやってもうまくいかないだろうし、それは自分が悪いからだ」と考えます。
オプティミスト(楽観主義)の方が、健康状態が良く、生活習慣病にかかる率も低く、平均よりも長生きし、仕事やスポーツでもよい成績をあげます。なので、楽観主義を習得した方が人生が楽しくなるでしょう。
では、ペシミスト(悲観主義)はうつ病発症率が高く、健康状態が悪い傾向にあり、仕事やスポーツのパフォーマンスを発揮できないデメリットばかりかというとそういうわけではなく、「現実を正しく記憶している」という長所があります。
1-2.学習性無力感について(三匹組の実験)
犬を3つのグループに分けて弱い電気ショックを与える実験です。
Aグループの犬に、弱い電気ショックを与えます。ただし、鼻でパネルを押すとその電気ショックを止めることができます(電気ショックをコントロールする力あり)。
Bグループの犬にも弱い電気ショックを与えます。ただし、電気ショックの装置はAグループの装置に連結されており、Bグループの犬は電気ショックを止めることができません(電気ショックをコントロールする力なし)。
Cグループの犬には電気ショックを与えません。
それぞれを分類どおりに経験させたあとで、犬たちをシャトルボックスに連れていきます。シャトルボックスは2部屋に分かれており、間の仕切りを飛び越えれば電気ショックから逃れることができます。
結果、電気ショックをコントロールできる経験をしたAグループの犬と電気ショックを与えなかったCグループの犬は数秒で仕切りを飛び越えたのに対して、Bグループの犬は逃げる努力をせずに座り込んだままでした。
Bグループの犬は何をしても無駄だという無力感を学習してしまった、これを『学習性無力感』と名付けられています。
「自分が何をしても無駄だ」という考え、これがいわゆるうつ状態であり、無力感を学習することでうつ病になることができます。また、ペシミスト(悲観主義者)はうつ病の発症率が高くなります。
1-3.説明スタイルについて
ではどのようにすれば起こった出来事に対して「無力感」ではなく「希望(自分次第で何とかできる)」を感じることができるか。まず出来事への解釈を以下の3つの要素に分けます。
・普遍性⇔特定
・永続性⇔一時的
・個人的⇔外的
ネガティブな出来事に対しては前者の解釈を、ポジティブな出来事に対しては後者の解釈を用いると「楽観主義」に成れます。
・ネガティブな出来事に対する悲観的な解釈例:私が悪いのだ(個人的)、ずっとこういう状態が続くだろう(永続性)、何をやってもうまくいかないだろう(普遍性)
・ネガティブな出来事に対する楽観的な解釈例:配偶者(ボーイフレンド/ガールフレンド)の機嫌が悪くて協会へ行こうとしない(外的/一時的/特定)
この解釈のことを「説明スタイル」と同著では記載されています。
1-4.オプティミスト(楽観主義者)の効果(ハツカネズミの実験)
オプティミスト(楽観主義者)の効果を確かめる実験です。
ネズミを3グループに分けます。
Aグループには逃れることのできる軽い電気ショックを。
Bグループには逃れることのできない軽い電気ショックを。
Cグループには電気ショックを全然与えない。
これを経験させた後にABCのネズミの脇腹に肉腫の細胞を植え付けます。肉腫は成長すれば確実に死に至るもので、通常の状態では50%の確率で死に至る量を植え付けました。
するとCグループの電気ショックを与えなかったネズミは統計どおり50%死亡、Aグループの電気ショックを自力で逃れることを学習したネズミは70%生存、Bグループの電気ショックを逃れられず無力感を学習したネズミは27%しか生存できませんでした。
楽観主義は寿命や免疫機能にも好影響をもたらすことが明らかに。
1-5.楽観的な説明スタイルを使わない方がいいとき
リスクが大きいことをするときは、楽観主義は避けた方がよいとあります。
酔ってたときに車で帰宅したいとか配偶者との不仲から不倫したいと思ったときとか。
逆にリスクが小さいこと(営業で断られた、新しいスポーツを習いたい、昇進の打診をする、など)は楽観主義的に行動を起こした方がよいです。
1-6.ペシミスト(悲観主義者)が向いている職業
悲観主義は現実感覚に優れるという長所があるので、正確性・慎重性が要される次のような職業に向いているとされています。
・設計/安全工学
・技術/コスト見積
・契約交渉
・財政統制/会計
・法律(訴訟を除く)
・経営管理
・統計
・テクニカルライティング
・品質管理
・人事/渉外管理
逆に楽観的説明スタイルが必須とされる職業は以下のようなもの。
・セールス
・仲買業
・広報
・俳優など人前に出る仕事
・寄付金を募る仕事
・創造的な仕事
・競争の激しい仕事
・燃えつきる(バーンアウト)率の高い仕事
2.書評/感想
原著は1990年初版で大したことは書いてないだろうと思ったらめっちゃ面白かったです(笑)要は「成功→幸福」ではなく「幸福→成功」というスキームを主張した内容。要約部分には取り上げきれていない実験の数々やロジカルな解説でとても納得のいく意見でした。
途中にうつ病のチェック項目や楽観的説明スタイルを持っているかどうかの採点表もあります。アメリカ人向けなので日本人に応用できるかどうかは不明ですが参考にはなるかも。
説明スタイルを悲観的から楽観的に書き換えるプロセスの解説においてもネガティブな出来事に関しては「普遍性/永続性/個人的」な捉え方を「特定/一時的/外的」に換えるというわかりやすい方法を提案してあり、ここに書いてあるメソッドを実践することで効果がでる(楽観主義を習得できる)人も多いのではないでしょうか。
あと著書の中に、
楽観主義の効用が世界中に通用するとは言えないかもしれない。~~(中略)~~日本人がいつも失敗を人のせいにする人に好意を持つとは想像できない。
よくわかってんなぁ~(笑)と思わず頷いてしまった。うつ病と異常心理学の世界的権威だけあって知識が半端ないですね。解釈を外的にもっていきすぎると日本的には問題ありそうなので、その他の部分(普遍性/特定、永続性/一時的)の解釈を楽観的な説明スタイルに換えていくといった国内版カスタマイズは必要そうです。
また、オプティミスト(楽天主義者)の効能を説明しつつ、ペシミスト(悲観主義者)は不要と切り捨てることなく、なぜペシミストは生き残ったのか、どういった役割や長所があるのか、を実験して回答を導き出す行動力・鋭い洞察力は、巷の自己啓発書とは一線を画している部分だと思います。
おわりに
そういや私Kindle Unlimitedを無料で使うの3回目くらいです(笑)Amazonのプライム会員の方はまた無料期間が使えるようになっているかもしれないのでのぞいてみてください。結構おすすめです。同書の内容は絶対もっと広まった方がいい。もう広まってたらごめんなさい。